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パワーデバイスの市場動向

パワーデバイスの市場動向

1. パワーデバイスの市場概況

電力の制御や供給に用いられるパワーデバイスは、自動車や産業機器、通信といった分野で広く採用されており、今後の需要拡大も期待されている。

また、次世代パワーデバイスとしてワイドギャップ半導体であるSiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)を用いたパワーデバイスの開発も進められており、実用化される事例も多く見られるようになってきた。

矢野経済研究所が2020年7月に発表したパワーデバイスの世界市場の調査では、2018年の同市場規模が対前年比約5.1%増の約186億6,500万USドルに達した。

翌2019年は、特にメモリ市場の低迷により半導体市場全体が軟調となった1年であったが、パワーデバイス市場は同約0.3%減の約186億1,600万USドルと微減に留まっている。

パワーデバイス世界市場推移
パワーデバイス世界市場推移

出典:矢野経済研究所「パワー半導体の世界市場に関する調査を実施(2020年)」

https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2485

2020年は新型コロナウイルスの感染拡大による影響を受けて、自動車や産業機器向け製品の需要が減退しており、同研究所は対前年比約9.0%減の約169億4,500万USドルを見込む。

以後は回復傾向となり、2025年には対2019年比で約30.8%増の約243億5,100万USドルに達すると予測した。

2020年は、先述の通り自動車や産業機器向け製品の売上が軟調となった一方で、通信向けではデータセンターや5G通信用基地局といったアプリケーションでの需要が増加している。

特に、5G通信の本格導入に伴って今後も基地局への設備投資が増加する見込みで、搭載されるパワーデバイスの需要増にも大きく寄与するものとみられる。

2. EVへの採用が拡がるSiCパワーデバイス

SiCを用いたパワーデバイスは、低スイッチング損失で高耐圧、高耐熱といったメリットがあり、周辺機器を含めた小型化が可能となることから、次世代のパワーデバイスとして近年大きな注目を集めている。

メガソーラー向けのパワーコンディショナーや家庭用エアコン、データセンター用サーバー、EV充電ステーション、地下鉄、新幹線といった分野で採用実績があるほか、Teslaが2017年7月に発売した電気自動車(EV)「Model 3」のメインインバータにもSiCモジュールが採用された。

以降もEVを中心にSiCデバイスの採用が進み、将来にわたって市場を牽引するアプリケーションとなることが予測される。

EVへの採用が拡がるSiCパワーデバイス

前述の矢野経済研究所の調査によると、2019年のSiCパワーデバイスの市場規模は約5億4,600万USドルで、パワーデバイス市場全体の2.9%程度に留まっている。

一方で、対前年比では約23.5%増と高い成長率を達成した。EV用インバータへのSiC採用が高成長の主な要因となっている。

従来は、SiCのEVへの採用は車載充電器などに限定されていた。

同研究所は、2025年の同市場が対2019年比で約3.3倍の約18億2,000万USドルに達し、パワーデバイス市場全体の約7.4%を占めるようになると予測している。

今後のさらなるSiCパワーデバイスの市場拡大にあたっては、デバイスの低価格化やSiCウエハの安定供給などが課題になるとみられる。

SiCウエハは近年になって4インチから6インチへと主な需要が移行してきた。

さらに8インチの開発も進められており、大口径化によりコストダウンも期待できる一方で、特に6インチウエハは供給不足が懸念材料となっている。

このため、SiCデバイスメーカーがSiCウエハメーカーを買収する事例や、デバイスメーカーとウエハメーカーとの間で長期供給契約を締結する事例などが多く見られるようになってきた。

SiCウエハ製造への新規参入や既存メーカーの設備投資による生産能力増強などにより、ウエハの供給体制が安定化に向かうことが期待される。

3. 急速充電器用途で採用が進むGaNパワーデバイス

従来青色LEDやレーザーダイオードの材料として活用されてきたGaNは、SiCと同様に次世代のパワーデバイス材料としても近年注目を集めている。市場規模としてはSiCよりも小規模なものに留まっているが、直近ではスマートフォンやラップトップPC向けの急速充電器に採用されるケースが増えており、市場形成が本格化してきた。

従来のSiデバイスを用いた充電器と比べて、GaNデバイスを用いた充電器は小型で充電時間が短く、消費電力や発熱を低減できるなどのメリットを有する。

AnkerやAukey、RAVPowerといった中国のスマートフォンアクセサリ大手が相次いで製品化しているほか、台湾のASUSのラップトップPC「ProArt StudioBook One」にもGaNを採用したACアダプターが同梱された。

GaNを用いることで、300Wと高出力ながら手のひらサイズに小型化されている。

GaNを採用した急速充電器「PowerPort Atom PD 1」出典:Anker
GaNを採用した急速充電器「PowerPort Atom PD 1」出典:Anker

今後ハイエンドスマートフォンメーカーの純正充電器やEV向け急速充電器などへの採用が進めば、さらなる市場の急成長も期待できる。

SiCと同様にGaNにおいても、近年デバイスメーカーによる他社との協業や買収が積極的に行われており、今後の動向も注目される。

安部’s EYE

安部’s EYE

一時トーンダウンしていた温室効果ガス排出規制に対する取り組みにおいて、世界各国から具体的な数値目標が相次ぎ発表されています。

我が国においても先ごろ菅総理から「2050年までに温室効果ガスの排出量ゼロ」とする指針が表明されました。

またガソリン車やディーゼル車の新車販売を禁止する動きも、2025年から禁止するノルウェーを皮切りに、2030年にはイギリス・ドイツ・スウェーデン・オランダ、2035年にはアメリカ・カナダの一部エリア、更に2040年には中国・フランス・スペインでも販売禁止とすることが表明されました。

これによりエネルギーとしての「電力」需要の高まりは飛躍的に拡大することになり、伴ってパワー半導体のニーズの高まりも注目を集めることになるだろうと考えます。

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需要が高まるGaNデバイスの特徴と市場動向

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