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業界トレンド情報 第三十九弾 ポスト5G・6Gで何が変わるか

業界トレンド情報 第三十九弾 ポスト5G・6Gで何が変わるか

1.さらなる機能強化が期待されるポスト5G

ポスト5Gとは、現在の5G(第5世代移動通信システム)と比較して、低遅延や多数同時接続といった機能がさらに強化された通信技術を指す。

FA(ファクトリーオートメーション)や産業用ロボットといった産業用途、自動運転をはじめとした車載・交通インフラでの用途、高速大容量を活かしたライブ配信やAR(拡張現実)、VR(仮想現実)での用途、同時接続数を活かしたIoT(モノのインターネット)デバイスでの用途などが期待されており、技術開発が鋭意進められている。

早期にポスト5Gの技術開発を進めることで、世界各国における競争力の向上が期待できる。
このため、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)は、2020年度に「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」を開始した。

予算額は事業期間総額で7,950億円を見込んでおり、開発した技術のうち50%以上の実用化を目標としている。
同事業では、「ポスト5G情報通信システムの開発」「先端半導体製造技術の開発」「先導研究」が3本柱となっている。
ポスト5G情報通信システムの開発では、ポスト5Gで求められる性能実現に向けた半導体、エッジデバイスといった関連技術の開発を進める。

先端半導体製造技術の開発では、パイロットラインを構築し、ロジックICの前工程・後工程製造技術を開発。
また、先端半導体のシステム設計技術や、製造に要する実装技術、微細化関連技術といった基盤技術などを開発する。
先導研究では、上記2つに関連するもので、ポスト5Gでは実用化に至らない可能性があるものの、さらに次の通信世代で活用できそうな技術の研究開発に取り組むとした。 

出所:経済産業省
出所:経済産業省

2.NEDO事業で採択された半導体関連の開発案件

ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業の「ポスト5G情報通信システムの開発」で採択された半導体関連の開発案件としては、ソシオネクストの「スケーラブルな大規模先端SoC設計技術の研究開発」やキオクシアの「広帯域大容量フラッシュメモリモジュールの研究開発」が挙げられる。
ともにMEC(モバイルエッジコンピューティング)に要する半導体関連技術となる。

出所:NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)
出所:NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)

例えばソシオネクストは、チップレットパッケージやSoCの設計技術、AIを用いたスケーラブルなマルチチップ設計技術などの研究開発を進める。
これらをMECに活用することで、ポスト5Gの実現に寄与する狙いとなっている。
 
また、先端半導体製造技術の開発では、先端半導体の前工程技術(More Moore技術)の開発、先端半導体の後工程技術(More than Moore技術)の開発、露光周辺技術開発、国際連携による次世代半導体製造技術開発、次世代メモリ技術開発、次世代半導体設計技術開発の6つを進める計画だ。
 
先端半導体の前工程技術では、「先端3次元構造ロジック半導体デバイスの製造・プロセス技術の開発と検証用パイロットライン整備」(東京エレクトロン、SCREENセミコンダクターソリューションズ、キヤノン)が採択された。
2nmプロセス以降で求められる前工程プロセスを開発する。
 
先端半導体の後工程技術では、「高性能コンピューティング向け実装技術」「エッジコンピューティング向け実装技術」「実装共通基盤技術」としてさまざまな研究開発が採択されている。

「3DIC技術の研究開発」(TSMCジャパン3DIC研究開発センター)、「高性能大面積3.xDチップレット技術の研究開発」(日本サムスン)と海外企業も含んでいる。

出所:NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)
出所:NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)

その他、露光周辺技術開発では「N1.5向けMORの研究開発」(JSR)、国際連携による次世代半導体製造技術開発では「日米連携に基づく2nm世代半導体の集積化技術と短TAT製造技術の研究開発」(Rapidus)、次世代メモリ技術開発では「次々世代大容量・広帯域メモリHBM4Eの研究開発」(マイクロンメモリジャパン)が採択されている。

3.2030年頃の実用化が予測される6G

ポスト5Gと6Gは、同じ意味で使用されているケースも見られるが、NEDOは両者を異なる意味で用いている。

ポスト5Gは、先述の通り5Gの強化版としており、6Gはさらなる次世代通信技術として2030年頃に運用開始が見込まれるとしている。
通信に用いる周波数帯は、ポスト5Gで最大71GHz、6Gでは100GHz以上に達する予測だ。

6Gでは、ポスト5Gと同じく低遅延や多数同時接続が進むのに加えて、通信エリアが拡張すると予測されている。
陸上でのカバー率が100%に達し、高度1万mの空や200海里の海、さらには宇宙空間でも活用可能となることが期待される。


出所:NTTドコモ

出所:NTTドコモ

なお、内閣府は、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)が高度に融合したシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会「Society 5.0」を提唱している。

狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く社会形態だ。
この実現に向けては、AIやロボット、IoTデバイスなどに加えて6Gの実用化が大きな役割を果たすものとみられる。

出所:内閣府
出所:内閣府

安部’s EYE

安部’s EYE

今回のトレンド情報は、「ポスト5G・6Gで何が変わるか」についてアップさせて頂く。

皆様も感じておられると思うが、私自身5Gの普及で日々の生活が相当に“便利”になったと感じているが、ポスト5G・6Gにより今以上に低遅延や多数同時接続が進み通信エリアが拡張されると、単なる“便利”ではなく“生活インフラとして必要不可欠”なものになるのは必至である。

とかくIoTの分野で後れを取っていると言われる我が国だが、記事にある通り2020年度に予算額7,950億円を確保した上で「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」を開始している。

JASMやRapidusと言った先端半導体製造への予算投下が注目されているが、そこで作られる先端半導体の活用としての事業も着実に進んでいることは、国際競争力の面でも期待大である!

世の中が、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会「Society 5.0」実現に向け大きく動き出している中で、先端技術にしっかり付いて行かなければと焦ると同時に、半導体業界に身を置く身としての責任の重さを痛感させられる記事であった。

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業界トレンド情報 第三十八弾 パッケージングの最新技術

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